物語  −6   ((明日発売!!Birthdayが好きです!

何も考えられなくなった頭で今分かる事はただ一つ。
あいつを追わなくちゃ・・・捕まえてきちんと話を・・・。

元気の全く無くなった僕はふらふらと力なく玄関へ向かった。
靴を適当に履く。
何か・・・もう何がなんだか・・・・。
「にゃぁー。」
でんたが僕を励ますように言った。
「・・ありがと。いってきます・・・。」
ドアをゆっくり閉めた後、僕は走り出した。
ある力、全部振り絞って。
風がびゅーびゅーくる。
本当に風が強かったのか、それとも僕が走っていたからなのか・・・。
空気を斬るように僕に当たっては過ぎていった。
たまに帽子を直さないと飛んでいっちゃいそうだった。
それでも兎に角走った。
あいつがどっちに行ったとかっていうのは分からない。
でも何となく気配が残っているような気がする・・・・。
それをたどれば絶対見つけられるはずだ。
そう思ってひたすら気配を追っていった。


気づけば商店街に出ていた。
さすが、平日の午前中。奥様方で道は混み混みだ。
遠く広く、目を最大限に使ってあいつがいないか見る。
この大勢の人混みの中・・・あいつがいそうな気がする。
目を細めて右から左へ。
その時、
左端の方に紅いものが見えた。
慌てて両目ともに左の方を見る。
・・・・間違いない。
あいつだ
あいつがいた・・・・!
もう一人の自分がいるのが気に食わないのだろうか、僕は。
何故かやたらと怒りがこみ上げてきた。
絶対、捕まえてやるぅ・・・!
人をかきわけかきわけ、一心不乱にあいつ目がけて走っていく。
向こうは気づいてないのか、鼻唄なんて歌っちゃってる。
あったまくるなーーー・・・。
このスピードで走ったら体育祭で一着だな・・・みたいな速さでいく。
手をのばせば、つ、掴める・・・あいつの肩を・・・!


そう思った時。


ズズズズズズゥッ・・・・・!!


見事なこけっぷりを僕は公共の場でさらした。


く、屈辱的。。。。
あと一歩で捕まえられたのにな・・・。
しかし、あいつの姿はもうサッパリ消え去っていた。
足はやいのか?


「大丈夫か?」
後ろの上から声がした。
こんな恥ずかしい奴を心配してくれる人がいるのか・・・世の中捨てたもんじゃないな・・・。
僕はくるりと振り返り満面の造り笑顔で
「だいじょぶです!ありがとうございます!」
と言った。しかし言った瞬間、僕の造り笑顔は崩れた。
表情が固まった。
驚きと妙な感動があった。
何故なら、
その声を欠けてきてくれた人は僕と同じ顔をしていたから・・・。