物語  −7   ((「FAB FOX」発売!おきつね様祭!

時間が止まった。
パタッと。
何が何だか分からないが、今僕の目の前にいるのは
紛れもなく。
紛れもなく。
僕の
兄弟・・・・。
顔が一緒だもんな・・・。
しばらく二人で見つめ合った。
男同士で気持ち悪い表現だと思うが本当に見つめ合ったという感じだったのだ。
・・・・・何から言えばいいのか・・・。
混乱した僕から最初に出た言葉はこれだった。
完璧固まった表情で。
それでもなんとなく笑った顔で。
相手に指を差しながら言った。


「・・・え、えーと・・・。お前、凜汰と桂汰・・・どっちだ?」

最悪なヤツだな、自分。いきなり「どっち?」とか言われていい気分する奴なんていねぇよ・・。
だからといって状況を説明しだすのもなんかなぁ・・・とかどこかで思ってしまったのがいけなかったのか・・・。
しかし、相手の返事は意外なものだった。
「って、ことは。
 ・・・お前が・・・翔汰かっ!?」
指で僕の事をさして、すんごい笑顔だった。
「・・・・え、そ、そう。俺、翔汰。せ、正解・・・!(?)」
相手の能天気っぷりにこう答えるしかなかった。
えと、これは・・・どういう事ですか?
呆然。
でも相手はずっと笑顔。
色々頭の中で回っていた。
一日で色んなこと有りすぎだっちゅうの・・。
「まぁ、翔汰。とりあえず立てよ。
 座ったまんま喋ってて・・恥ずかしいだろ?」
「う、うん・・・。」
手を引っ張ってくれた。
いい奴だな。こんないい兄弟を持ってるのか、僕は。
そんな事を思いつつ、もう一方の脳では他の考え事をしていた。
なんでこいつは僕の事翔汰だって分かったんだろ?
向こうも三つ子がいるって事、知ってんのか?
立ち上がりズボンをパタパタとはたき、相手の顔をちらっと見る。
見る・・というより睨むって感じ。
人見知りなんだよな・・・。いくら兄弟とはいえ、なんか話しにくい・・・。
初めて会った訳だし。
よく見てみると相手は僕より若干つり目で背もちょっと高かった。
あと、右頬にあざ。
「えと。俺、桂汰な。翔汰よろしく!」
「・・桂汰・・・よろしく。」
桂汰は手を僕の方に出した。
握手・・・か。青春映画みたいな事するんだな。
僕も出した。手。
がっしり握手する。男の友情って感じか?まぁ兄弟だから友情もくそも無いけど。
「俺、ここの隣の町に住んでんだ。
 翔汰はここに住んでるのか?」
軽い感じの人だなぁ。話しやすいよ。
「うん。そう。」
二人でにこり・・・ぁぁ、いい兄弟持ってたんだなぁ・・・しみじみ・・・。


って、
そんなこと言ってる場合じゃなかった・・!!
もっと大事な事があるじゃねぇか!!
「桂汰!」
いきなり慌て出した僕に少し驚く桂汰。
「何、何だよ。」
「何だよじゃなくてさっ。俺、お前に会えて凄い嬉しいんだけどね、
 その、つまり、俺たちって兄弟なんだよな?」
すっかり僕の中で兄弟になっていたが・・まずその確認もとってねぇじゃんかよぉう。
なんかやけにヒートアップしていた僕。
桂汰の両肩をひしっと掴んでいた。
「・・・!!そうだ、たうだったよな?!
 俺らって兄弟なんだよな!?」
桂汰も重要な事に思い出したようだった。
「これだけ顔が似てて、兄弟じゃないってのはおかしいと思うんだよ。俺。」
「俺も思うよ、それは。」
「で、まぁ、その。
もう一つ、証拠みたいな物があって・・・。これ見てくれ、朝見つけたんだ。」
ポケットからへろへろになった写真をだして桂汰に渡した。
「・・・・翔汰ん家もあったのか?この写真。」
「・・・へ?桂汰も見たことあんのか?これ。」
「見たことあるもなにも。今、持ってるし。」
桂汰、同じくポケットから折ってある写真を取り出す。
「ほれ。」
確かに僕が持ってるのと一緒だ・・・。
「俺もさ、朝、親父の部屋で発見して。
 で、なんかこう、ピーンとキてな。
 『今、外に出ればこの写真の兄弟に会える!』って。そう思って。
 走って走ってここまできちまった。
 そしたら翔汰を見つけてな。」
にやにや笑いながら喋る桂汰。
「直感って凄いと思ったぜ、ホント。」
「実は、俺も桂汰に会える気がしたんだ。」
「マヂかよ!」
「マヂマヂ。」
二人で大笑いしてしまった。
俺は桂汰に会えるってどこかで確信して家を飛び出したんだ・・・。
いや、ちょっと待てよ?
違うな・・。それで家を出てきたんじゃなくって・・・。
・・・・そうだ!
「鏡から出てきた俺はどこいったんだ?!」
思わず口に出てしまった。
「・・・翔汰?」
・・・桂汰にも説明しなければ・・。
正直、この事を僕一人で抱え込むのは気が重い。
ここはブラザーに相談だ。
「桂汰、もう一個重要な事がな・・・。
 あんな、こっちは兄弟の話よりもずっと現実味が無いから落ち着いて聞いてほしい。」
「なんだよ。」
「信じてほしいんだ。
 朝、その写真を発見した後・・・鏡から俺が出てきたんだよ。」
しばし沈黙。
「・・・プ、ハハハハハハハハハハハハッ!!!」
・・・笑われた。
「本当なんだってば!」
真面目に話してるのに・・・笑うのも無理ないような話だけど。
「翔汰、写真見つけて頭が混乱してんからそんな物見えたんじゃないのか?」
「そ、そんな事っ・・・・」
幻覚が見えたって事か?
確かにハイテンションな時だったからあり得なくは無いけど・・・。
「俺なんかよりも翔汰が落ち着け。
 鏡の中からなんかが出てくる訳ないんだから。な?」
「う、うん・・・。」
結局、幻覚って事で済まされた。
・・・僕も「無理矢理だなぁ・・」と思いつつ、一応納得した。
(後で幻覚じゃないって分かる訳なんだけどね)
「俺らには解決しなきゃいけないことが沢山あんだ。
 今分かる事を一つ一つ考えていこう、な。」
「そ、そだな。」
桂汰は僕なんかよりはるかに落ち着いた奴だった。
子供っぽい所あるけど。
「とりあえず。ここ、五月蝿いから近くの公園にでも行こうぜ。」
「分かった。調度いいところがあるよ。」


冒険が本格的に始まったみたいだ。